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「開業届は出した。仕事も少しずつ入ってきた。でも、確定申告のことはまだ何も考えていない」——開業1年目の方から、秋口になると決まってこうした相談が増えてきます。
確定申告の時期は、毎年2月中旬から3月中旬です。令和8年分(2026年分)の申告期間は、2027年2月16日(火)から3月15日(月)までです。まだ先に感じるかもしれませんが、1年分の記録を2月にまとめて入力しようとすると、ほとんどの方が途中で手が止まります。
この記事では、初めて確定申告を迎える個人事業主の方に向けて、会計ソフトを選ぶ前に決めておくべきことを中小企業診断士の立場から整理しました。「どのソフトが一番いいか」の前に、「自分はどう申告するのか」を決めておくと、ソフト選びで迷わなくなります。
具体的な申告の手順は「個人事業主の確定申告のやり方完全ガイド」で解説しています。この記事は、その一歩手前の「選ぶ前の判断」に絞ってお伝えします。
初めての確定申告で、まず決めること
会計ソフトを比べる前に、決めておきたいことが2つあります。どちらを選ぶかで、ソフトに求める機能が変わるからです。
青色申告か白色申告か
個人事業主の確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。
| 青色申告 | 白色申告 | |
|---|---|---|
| 事前の申請 | 必要(青色申告承認申請書) | 不要 |
| 特別控除 | 最高65万円 | なし |
| 赤字の繰越 | 翌年以降3年間 | 原則なし |
| 帳簿 | 複式簿記(65万円・55万円控除の場合) | 簡易な記帳 |
青色申告は、手間が増える代わりに税金面のメリットが大きい方式です。ただし事前に申請していないと選べません。開業時に開業届と一緒に青色申告承認申請書を出していれば青色申告、出していなければその年は白色申告になります。
自分がどちらで申請したか覚えていない方は、税務署に提出した書類の控えを確認してください。ここが決まらないと、ソフトを選ぶ基準も決まりません。
e-Taxで出すか、紙で出すか
青色申告の特別控除は、提出方法によって金額が変わります。
- 65万円:複式簿記で記帳し、e-Tax(電子申告)で提出する、または一定の要件を満たす電子帳簿保存を行う
- 55万円:複式簿記で記帳し、紙で提出する
- 10万円:簡易な記帳で申告する
同じ帳簿をつけていても、紙で出すかe-Taxで出すかで、控除額が10万円違います。税率によっては、手取りで数万円の差になることもあります。
青色申告で65万円の控除を受けたいなら、e-Taxでの提出まで対応したソフトを選ぶのが自然です。マイナンバーカードがあれば、自宅から提出できます。
会計ソフトは必要か
結論から申し上げると、青色申告で65万円控除を狙うなら、会計ソフトはほぼ必須です。
複式簿記は、ひとつの取引を「借方」と「貸方」の2つの面から記録する方法です。簿記の知識がないまま手書きやExcelで正確に続けるのは、正直なところかなり大変です。会計ソフトを使えば、取引を入力するだけで複式簿記の形に整えてくれ、決算書や申告書の作成まで一続きで進められます。
一方、白色申告で売上も経費も少ないうちは、Excelでの記録でも対応できないことはありません。ただ、事業が軌道に乗って青色申告に切り替えるときに、結局ソフトを導入することになります。最初からソフトで記録を始めておくと、切り替えのときに慌てずに済みます。
選ぶ前に確認したい4つのこと
会計ソフトはどれも基本的な機能を備えていますが、得意分野は違います。次の4点を自分に当てはめてみると、選ぶべきソフトが見えてきます。
① 簿記の知識があるか
簿記をまったく知らない方と、学んだことがある方では、使いやすいと感じる画面が違います。前者は質問に答える形で進むソフト、後者は帳簿の形に近い画面のソフトが合いやすい傾向があります。
② 銀行口座やクレジットカードを連携するか
事業用の口座やカードを連携すると、明細を自動で取り込めます。入力の手間が大きく減るため、取引の件数が多い方ほど、連携できる金融機関の広さが効いてきます。自分が使っている銀行・カードが対応しているかは、事前に確認しておきましょう。
③ 将来、人を雇う・法人化する予定があるか
給与計算や請求書発行、法人向けの会計まで同じシリーズで広げられるかどうかは、事業が大きくなったときの移行のしやすさに関わります。
④ インボイス発行事業者に登録しているか
登録している場合は、消費税の申告も必要になります。インボイスに対応した記帳や、消費税申告書の作成まで対応しているかを確認してください。インボイス登録の判断そのものは「個人事業主のインボイス対応ガイド」で整理しています。
3大ソフトは、こんな人に向いている
個人事業主向けの会計ソフトで、よく比較されるのがfreee・マネーフォワード・やよいの3つです。
| 項目 | freee会計 | マネーフォワード クラウド確定申告 | やよいの青色申告 オンライン |
|---|---|---|---|
| 評価 | ⭐ 4.5 | ⭐ 4.4 | ⭐ 4.3 |
| 月額料金(〜) | 1,518円 | 1,408円 | 無料プランあり |
| おすすめの方 | 簿記の知識がない初心者 | 副業から事業拡大を見据える方 | コストを抑えつつ確実に始めたい方 |
| 公式サイト | freee会計 |
マネーフォワード クラウド確定申告 |
やよいの青色申告 オンライン |
freee会計
は、「簿記が分からなくても経理ができる」という考え方で作られたソフトです。「これは収入か支出か」といった質問に答える形で進むため、簿記に触れたことがない方、初めての確定申告に不安がある方と相性が良い製品です。帳簿づけから申告書の作成までが一続きになっていて、全体の流れがつかみやすいのも特長です。
マネーフォワード クラウド確定申告
は、銀行・クレジットカード・電子マネーなど連携先の広さに定評があります。明細の取り込みから仕訳候補の作成までが滑らかで、取引件数が多い方の記録の手間を減らしやすい製品です。請求書発行や経費精算などの周辺サービスが揃っており、将来的に人を雇う・法人化する予定がある方には移行のしやすさという利点があります。
やよいの青色申告 オンライン
は、会計ソフトとして長い実績があり、画面構成が帳簿の形に近く、簿記を学んだことのある方には理解しやすい製品です。サポートの手厚いプランが用意されているため、初めての確定申告で分からないことを聞ける安心感があります。コストを抑えて始めたい方の選択肢としてもよく候補に挙がります。
3つとも、無料で試せる範囲が用意されています。画面を実際に触ってみて、続けられそうだと感じたものを選ぶのがいちばん確実です。3社の機能をさらに細かく比べたい方は「freee vs マネーフォワード vs 弥生 徹底比較」をご覧ください。
いつから始めれば間に合うか
答えは、開業したらすぐ、遅くとも年内にはです。
確定申告で大変なのは、申告書を作る作業そのものより、1年分の取引を思い出して入力する作業です。領収書の束を前に、どれが事業用でどれが私用だったかを2月になってから仕分けるのは、想像以上に時間がかかります。
おすすめの進め方は次のとおりです。
- 今月中にソフトを決めて、口座とカードを連携する
- 週に1回、10分だけ取り込んだ明細を確認する
- 年明けに1年分を見直し、2月にe-Taxで提出する
週に1回の確認を習慣にできれば、確定申告の時期には数字がほぼ揃っています。開業1年目は仕事を軌道に乗せることで手一杯になりがちですが、記録を後回しにしないことが、結果的にいちばん時間の節約になります。
よくある質問
Q1. 開業した年が途中からでも、確定申告は必要ですか?
A. 年の途中で開業した場合も、開業日から12月31日までの事業の所得について申告します。会社員として働いた期間がある年は、給与所得とあわせて申告するのが一般的です。赤字であっても、青色申告なら申告しておくことで翌年以降に繰り越せます。
Q2. 青色申告の申請をしたかどうか分からなくなりました。
A. 開業届と一緒に提出した書類の控えを確認してください。控えがない場合は、提出先の税務署に問い合わせると確認できます。申請していなければ、その年は白色申告になります。
Q3. 会計ソフトは途中で乗り換えられますか?
A. 乗り換えは可能です。ただし年の途中で変えると、データの移行や二重入力の手間がかかります。乗り換えるなら、新しい年が始まるタイミングがおすすめです。だからこそ、最初に無料で試して、続けられるものを選んでおくことが大切です。
Q4. スマートフォンだけで確定申告できますか?
A. 3つのソフトとも、スマートフォンから記録や確認ができる機能を用意しています。マイナンバーカードを読み取れるスマートフォンであれば、e-Taxでの提出まで行える場合もあります。ただ、1年分をまとめて見直す作業はパソコンのほうが効率的です。
Q5. 経費にできるかどうか迷う支出はどうすればいいですか?
A. 事業に必要な支出かどうかが判断の基準です。自宅兼事務所の家賃や通信費のように、事業とプライベートの両方で使うものは、事業で使う割合に応じて按分します。判断に迷うものは、税務署や税理士に確認してください。
まとめ
初めての確定申告で会計ソフトを選ぶ前に、青色申告か白色申告か、e-Taxで出すか紙で出すかを決めておきましょう。青色申告で65万円の控除を受けたいなら、e-Taxまで対応したソフトを選ぶのが自然です。
そのうえで、簿記の知識、口座やカードの連携、将来の事業の広がり、インボイス登録の有無という4点を自分に当てはめると、選ぶべきソフトが絞れます。
そして何より大切なのは、開業したらすぐ記録を始めることです。確定申告の大変さは、ソフトの機能よりも、記録を後回しにしたかどうかで決まります。まずは気になるソフトを無料で試してみてください。
監修:合同会社白眉コンサルティング 代表 堀 寿弘(中小企業診断士・応用情報技術者)
※ 本記事は2026年10月時点の制度にもとづく一般的な情報です。個別の税務判断は、税務署または税理士にご確認ください。
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